職場の勉強会が消えたなら、自分で作ればいい――中堅PTが11ヶ月やってみてわかったこと
- 勉強会を自分で立ち上げた経緯と、続けるための設計(月2回・30分・任意参加)
- 11ヶ月やってみてわかったこと――場が変わると人が動く
- 反省と次への課題――受け身になりがちな場をどう変えるか
勉強会がないなら、自分でやってしまえばいい。
大げさな話ではありません。月2回、30分、任意参加。それだけです。職場に変わってもらうのを待つより、自分が動く方が早かった。
これは、そう決めて動いた11ヶ月の記録です。

「勉強会がない」と嘆くのは簡単です。でも待つより動く方が、結局ラクでした。
なぜ若手に向けてやろうと思ったか
きっかけは、前の記事「職場の勉強会が消えていった理由」に書いたモヤモヤです。先輩からもらったものを後輩に渡せていない、という感覚が消えなかった。
どこに向けて動くか考えたとき、凝り固まった中堅より、やる気のある若手の方がいいと思いました。臨床教育に関わっていた経験からも、若いうちに基本的な考え方を身につける方が、後から応用が利く。
もう一つは、自分の自己研鑽も兼ねてという理由です。年代が離れると、若手がどこでつまずいているのかが見えにくくなります。なぜわからないのかを見直す機会として、自分にとっても意味があると思いました。
若手に直接聞いてみたとき、リスク管理の基本がわからないという悩みが多かったのも後押しになりました。ケースが違えば考え方も変わる。でも基本的な考え方を持っていれば、応用は利く。そこを一緒に整理したいと思いました。
続けるための設計
一番気をつけたのは、続けられる設計にすることでした。
私自身も時間は有限です。子供もいるので早く帰りたい。1回2回の熱量で燃え尽きて終わっては意味がない。そう考えて、最初から熱量を分散させる設計にしました。
決めたのはシンプルな3つのルールです。月2回・17時30分から30分間・出席は任意で仕事が終わっていなければ来なくていい。この3つだけ。
強制しないのは大事にしました。来たい人が来る場所でないと、続かないし、来る側も来づらくなります。

「月2回・30分・任意参加」。この設計があったから11ヶ月続けられました。熱量より仕組みです。
実際にやってみて気づいたこと
最初にやってみて驚いたのは、20分話すことの難しさでした。
「20分話して10分は質疑応答」というつもりで始めましたが、20分がとにかく長い。こちらが一方的に喋るだけでは場がもたない。途中から、こちらが問いかけて答えてもらう形を入れるようにしました。聞くスタイルを入れることで、場が動くようになりました。
伝えることの難しさを、改めて実感しました。わかっているつもりのことを、わかるように説明するのは別の技術です。これは自分にとって大きな気づきでした。
他の人を巻き込んだ
最初から野望がありました。自分だけがやり続けるのではなく、他の人にも講師をやってもらいたい、ということです。
数回自分でやって形を作ってから、趣旨を説明して同調してくれた人に声をかけました。意外と皆さん快く受け入れてくれて、4回講師をやってくれました。
思ったのは、需要がわかると人は動く、ということです。教えたい気持ちはあっても、相手にどう思われるかが怖くて動けない先輩は多い。でも「参加者がいて、求められている」とわかれば、踏み出せる人は意外と多かった。
11ヶ月続いた。変わったこと
昨年2月から始めて、12月まで続きました。1月から育休を取得したので、そこで一区切りになりましたが、11ヶ月続いたことは正直自分でも驚きました。
参加人数は波がありました。最初は10数人いましたが、一番少ない日は3人。それでも、1人でも来てくれるなら開催する、というスタンスを変えませんでした。その1人に届けばいいと思っていたので、後悔はありません。
一番うれしかったのは、勉強会の内容が実際の臨床につながった場面を見たときです。
リスク管理の勉強会で、深部静脈血栓症について話したことがありました。どこにあるか、いつからあるか、検査はされているのか——そういった基本的な確認の流れを一緒に整理しました。その後しばらくして、同じような症例を担当した若手から「先生に相談してリハを進めました」と報告を受けました。
リハ医や主治医と自分で相談しながら動けていた。勉強会で話したことが、そのまま臨床の判断に使われていた。それを聞いたとき、やってよかったと思いました。

勉強会で話したことが、後日の臨床で使われていた。この一言が、11ヶ月続けた一番の報酬でした。
反省と次への課題
反省もあります。
ネタがリスク管理系に偏ってしまったことです。人気はありましたが、どうしても受け身の場になりがちでした。参加者が聞いて終わる。こちらが話して終わる。症例検討もやってみましたが、議論をまとめるのが難しく、結論が出ないまま時間切れになることもありました。
ただ、勉強会の後に個別で話しかけてくれる若手が意外と多かったんです。「あの話、自分の担当患者さんのことが気になって」という内容が多く、グループの場では言い出せなかったことが、1対1だと素直に出てくる。
これは発見でした。場の形式が変わると、出てくる言葉も変わる。勉強会という集団の場と、その後の個別の会話を意図的にセットにする設計が、次にやるなら必要だと感じています。
「参加者が考えて動く」場にするには、もう少し仕掛けが必要でした。自分の課題として持ち帰れたことは、収穫です。
まとめ
11ヶ月やってみて、一番感じたのは設計の大切さです。
- 動機は「恩返し」と「自己研鑽」の両方。若手の「リスク管理がわからない」という声が背中を押した
- 続けるための設計は月2回・30分・任意参加のみ。熱量より仕組みが大事
- 「需要がわかると人は動く」――他の人も講師として巻き込めた
- 臨床で使われた瞬間が一番うれしかった。勉強会はその入口になれた
- 課題はディスカッション不足。個別で話すと本音が出る、という発見が次の設計につながる
若手に需要はあります。機会がないから学べていないだけで、学びたい気持ちは確かにある。職場が変わるのを待つより、自分が動く方が早い。そう思える中堅PTが一人増えれば、若手の環境は少し変わると思っています。
