PT×キャリア

大学病院PTの残業リアル――17年で見えた「申請できない空気」と、ポジティブ残業・ネガティブ残業の違い

yutorizeropapa
この記事でわかること
  • 大学病院PT17年の残業リアル(申請できない空気のこと)
  • ポジティブ残業・ネガティブ残業の違いと見極め方
  • 職場の「残業文化」で転職先を選ぶという視点

大学病院に就職を考えているPT学生、あるいは転職先として大学病院を検討している方に、よく聞かれることがあります。「残業ってどのくらいありますか?」

正直に言います。「残業はほとんどありません」と答える職場がほとんどだと思います。私の職場も、若手にはそういう空気があります。でもそれは、残業がないということとは少し違います。

17年間、大学病院で理学療法士として働き、途中で系列病院に異動し、今は管理職として残業申請を受ける側にいます。その経験から、残業のリアルを正直に書きます。

1年目:残業申請の仕方を誰も教えてくれなかった

入職した頃、私は毎朝7時半に出勤していました。タオルの準備、お湯を沸かす、電子カルテの確認——これらは業務時間外の話です。でも誰も「早く来すぎ」とは言いませんでした。むしろそれが当たり前の空気でした。

業務終了は17時半でしたが、実際に帰れるのは夜7時から8時ごろ。カルテ記載、報告書作成、患者さんの情報収集、自己学習——やることはいくらでもありました。

ただ、残業として申請したことは一度もありませんでした。理由は単純で、申請の仕方を教わっていなかったからです。そして「残業を申請するのはよっぽどの理由がない限り無理」という空気が、職場全体にありました。

今思えば、あの時間のほとんどはサービス残業でした。でも当時はそれが当たり前だと思っていました。急性期1年目のしんどさについてはなぜ急性期を選んだのかの記事にも書いています。

岩さん
岩さん

1年目のとき、残業申請の仕方を誰も教えてくれませんでした。みんながサービス残業している空気の中、申請できなかった。それが何年も続きました。

中堅になって気づいた「口だけの残業推奨」

8〜10年目になると、労働基準法が職場でもよく話題になるようになりました。上司は「残業がある人はちゃんと申請してください」と口では言っていました。でも、実際に申請する人はほとんどいませんでした。

空気を読まない人、あるいは残業代が欲しいというマインドの人だけが申請していました。それ以外の人は「いやいや、これは残業じゃなくて…」というテンションで、サービス残業を続けていました。

業務時間内に終わらないのは事実でした。でも「終わらない=残業申請」という発想にはなれない。そういう職場の文化が、長年かけて染み付いていたのだと思います。「このままでいいのか」と感じ始めた経緯とも重なる部分があります。

異動先でのカルチャーショック――上司の空気感一つでこんなに変わる

そんな状況が続く中で、系列病院への異動がありました。給与体系もシステムも基本的には同じ。でも、残業に対する空気がまったく違いました。

「残業していいよ」ではなく「残業してもいいよ」という雰囲気。これがカルチャーショックでした。申請することへの心理的ハードルが、前の職場とは段違いに低かったのです。

上司の空気感一つで、これほど職場文化が変わるのかと驚きました。同じ系列、同じ給与、同じ制度なのに、残業に対する職員の行動がまるで違う。制度ではなく、文化の問題だと実感した瞬間でした。異動を選んだ経緯については転職ではなく異動を選んだ理由の記事に書きました。

ただ、異動先が全て良かったかというとそうでもありませんでした。残業を申請できる環境になって初めて気づいた問題があったからです。

管理職になってわかった「本当に全力でやった結果の残業か?」問題

ポジティブ残業 vs ネガティブ残業
  • ポジティブ:自分で選んでいる残業(研究・勉強・準備)
  • ネガティブ:申請できない・断れない・空気で強制される残業
  • 職場選びの基準:「残業の量」より「残業の文化」で判断する

残業を申請しやすい環境になると、今度は別の問題が出てきました。「これは本当に全力を尽くした上での残業なのか」という問いです。

もう少し工夫すれば終わったのではないか。もう少し頑張れたのではないか——そういう気持ちを押し潰して残業のハンコを押す場面が、正直いたたまれなかった。

そこで行き着いたのが「事前申請」という形でした。「このくらい仕事量があるので、今日は終わらなそうです」と先に申告してもらう。そうすることで、上司側も客観的に「それなら終わるんじゃないか」「この業務は明日でいい」と判断できる。モヤモヤが少し晴れました。

もう一つ、管理職として気になっているのが「頑張っている人ほど残業申請しない」という構造です。仕事が遅いのは自分の能力が低いせいだと思っている。だから申請できない。でも、仕事量の配分を決めているのは上司である自分です。配分ミスを棚に上げて「申請しない美徳」を押し付けるのはおかしい。

だから今は、終わらなそうな人に積極的に声をかけています。特に若手には「申請していいんだよ」と伝えるようにしています。主任・管理職としての視点については主任になってよかったのかの記事にも書いています。

ポジティブな残業とネガティブな残業――どちらかで職場を見極める

就職・転職先の残業を見極めるのは正直難しいです。どの職場も「残業はほとんどありません」と言うからです。

ただ、私が伝えたいのは残業の「量」より「質」で職場を見てほしいということです。残業には2種類あります。

ポジティブな残業とは、業務時間後に患者さんについて深く考えたり、先輩に相談したり、自己学習できる時間のことです。強制されているわけでもなく、自分の成長のために使える時間。私自身、1年目の残業時間の多くはこれでした。振り返ればキャリアの土台になっていたと思います。

ネガティブな残業とは、カルテや書類が単純に終わらないから残る、というパターンです。自分の成長には一切つながらない。消耗するだけです。これが常態化している職場は、長く働く上で大きなリスクになります。

見学や面接のときに「残業はありますか?」と聞いても正確な答えは返ってきません。代わりに「業務時間後に自己学習や勉強会をしている人はいますか?」と聞いてみてください。ポジティブな残業が文化として根付いている職場かどうか、少し見えてきます。

まとめ:残業の「量」ではなく「文化」で職場を選ぶ

まとめ
  • 残業の量より「申請できる文化か」を転職先で確認する
  • 管理職になって初めて「なぜ残業するのか」が問われる
  • 残業文化は上司一人で変わる――職場の雰囲気は見学時に必ず確認を

大学病院PTの残業は、表向きの数字よりも「申請できる空気があるか」「何のための残業か」の方がずっと重要です。

同じ系列病院でも、上司の空気感一つで残業文化はまったく変わります。制度ではなく、文化の問題です。就職・転職先を選ぶときは、残業時間の数字より、その職場で残業がどう扱われているかを見てほしいと思います。

ポジティブな残業ができる環境であれば、むしろ積極的に使ってほしい。それがキャリアの土台になります。ネガティブな残業が常態化している職場なら、早めに見極めた方がいい。その判断をするためにも、外の情報を持っておくことは大切です。転職を考える前に市場価値を把握しておくことが、いざというときの判断を助けます。

ABOUT ME
岩さん
岩さん
大学病院17年・2児パパの現役PT
大学病院で17年働く現役PT。修士・認定PT取得、育休2回取得の2児パパ。 転職はしていないけど、「このままでいいのか」とずっと考えている。転職サービスで外の市場を調べ、自分の立ち位置を把握した上で今の職場にいる。キャリア・転職・育児・お金について、答えじゃなくてリアルを書いています。
記事URLをコピーしました