大学病院PTのメリット・デメリット――17年働いた理学療法士が正直に話す
- 大学病院PTのメリット・デメリット(17年働いた本音)
- 入職後3年間が特にきつかった理由
- 大学病院に向いている人・向いていない人の特徴
大学病院で理学療法士として17年働いています。
就職先を選ぶとき、「大学病院ってどうなんだろう」と思ったことがある人は多いと思います。ネットで調べると「経験が積める」「激務」といった情報は出てきますが、実際に長く働いた人間が正直に書いたものは意外と少ない。今日は、17年いた立場から、できるだけ正直に書いておきます。
大学病院で働くメリット
多様な疾患・症例を経験できる
大学病院の一番の強みはここだと思っています。疾患が多岐にわたるので、整形・神経・内部疾患・がんなど、幅広い症例を担当することになります。在院日数が短く回転数が早いので、若いうちから多くの患者さんを担当できます。
「量質転化」という言葉があります。ある程度の量をこなすことで、徐々に質が上がっていく。同じ疾患を複数回担当するうちに、前回うまくいかなかったこと、考えが及ばなかったことが、次の担当のときにできるようになっていく。その積み重ねを実感したとき、大学病院での経験が自分の土台になっていることを感じました。
リスク管理の力がつく
全身状態が不安定な患者さんを担当することが多いため、バイタルの読み方・急変への対応・他職種との連携など、リスク管理の感覚が自然と身につきます。これは他の職場ではなかなか経験しにくい部分です。
研究・教育の環境がある
研究に取り組んでいるスタッフがいる環境は、刺激になります。大学院に行った経験もありますが、研究に関心がある人にとっては、大学病院はそのための環境が整っています。教育システムも比較的しっかりしていて、新人のうちは手厚く指導を受けられることが多いです。
17年を振り返ると、臨床・教育・研究を多角的に考えられるようになったと感じています。一つの視点だけで物事を見るのではなく、複数の角度から考える力は、大学病院という環境があったからこそ身についたと思っています。
大学病院で働くデメリット
一つの疾患を極めるのは難しい
「心臓だけ専門にやりたい」という人には向きません。大学病院では一つの疾患に絞ることができず、幅広くやることが求められます。専門特化を目指すなら、専門病院やクリニックの方が適しているかもしれません。
書類が多く、忙しさが違う
在院日数が短いということは、それだけ書類の回転も早いということです。入院・退院・転院の書類、サマリー、カンファレンスの準備。臨床以外の業務量は、正直多いです。「思ったより書類仕事が多い」と感じる人は少なくないと思います。
精神的な負担がある
大学病院では、患者さんが亡くなることがあります。急性期で状態が不安定な方を担当するので、これは避けられません。担当していた患者さんを看取ることの精神的な重さは、慣れる部分もありますが、完全には慣れない部分もある。
研究への関与が負担になることもある
研究環境があることはメリットですが、研究に興味がない人にとっては負担になります。学会発表や論文への関与を求められる職場もあります。「臨床だけやりたい」という人には、プレッシャーになる場面があるかもしれません。
ルールが多く、自由度は低い
組織が大きい分、ルールや手続きが細かく決まっています。自分の裁量で動ける範囲は狭い。転職を本気で考えた理由の一つもここにありました。「マニュアル通り」「前例通り」が優先されやすく、新しいことを試したい人には窮屈に感じる場面があります。
入職してからの3年間が一番きつかった
大学病院では疾患ごとにチームが分かれていることが多く、私の職場では3年かけてローテーションをする仕組みでした。
ローテーションのたびに、また1からという気持ちになりました。新しいチームに移るたびに、その疾患の勉強をゼロからやり直す。「できない自分」と向き合い続ける3年間でした。勉強しなければという気持ちは、今振り返ってもあの頃が一番強かったと思います。
当時は、仕事の1時間前に出勤し、残業の申請もせず夜8時・9時まで残ってやっていました。今の時代とは違うかもしれませんが、それだけの気持ちがないとやっていけない環境でもあったと思います。若いうちは体力があるからこそ乗り越えられた部分もある。
その3年間があったからこそ、その後の臨床の土台ができたとも感じています。1年目が正直しんどかった話はこちらにも書きました。
入職してから3年間は、本当にしんどかった。でも今振り返ると、あの3年間があったから今の自分があると思っています。
大学病院に向いている人・向いていない人
- 向いている:研究や学会に関わりたい人・長期的に専門性を深めたい人
- 向いていない:早く給与を上げたい人・異動を嫌がる人
- どちらでもある:臨床に集中したい人(施設によって差がある)
17年いた目線で正直に言うと、以下のような人には向いていると思います。
- 切り替えが速い人。一人の患者さんを深くじっくり関わるより、次々と担当を変えながら対応できる人
- 要領がいい人。限られた時間の中で何を優先するかを考えられる人
- 精神的にある程度タフな人。看取りや急変に向き合える耐性がある人
- 体力がある人。急性期は体力勝負の面がある
逆に、一つの疾患にこだわってじっくりやりたい人、自由な裁量で動きたい人、研究への関与が苦手な人には、合わない場面が多いかもしれません。
学生時代に「要領が悪くて人より勉強に時間がかかる」という人も多いと思います。でも、臨床に出ると時間は限られています。その中で何を優先するかを考える力は、現場に出てから鍛えられるものでもあります。
それでも、大学病院でよかったと思っている
正直に言えば、大学病院を選んでよかったと思っています。
多くの疾患を見てきたこと、リスク管理の感覚を身につけられたこと、多くの患者さんを担当してきた経験は、今の自分の土台になっています。「このままでいいのか」と悩む瞬間はあります。でも、大学病院での経験そのものを後悔したことはありません。
若いうちに量をこなすことで、将来の臨床の質が変わる。一生懸命やってきたからこそ、そう言い切れます。
大学病院への就職を迷っている若手PTへ
- 大学病院は「専門性・研究・教育」を重視する職場
- 給与や安定性より「キャリアの幅」を取りたい人に向いている
- 入職後3年が一番きつい。そこを超えると見えてくるものがある
一つだけ聞いてほしいことがあります。自分の将来について、どこまで考えていますか?
プライベートを大切にしたい、ワークライフバランスを重視したい、というなら、もっと楽な職場は多くあります。それは悪いことではなく、優先順位の問題です。
ただ、若いうちに苦労することで理学療法士としての土台を作りたい、将来の自分のキャリアに投資したい、と思えるなら、急性期の大学病院は選択肢として十分に価値があると思います。
頑張れる人に、大学病院は応えてくれると思います。
大学病院でのキャリアを積みながら「このままでいいのか」と感じ始めた話はキャリアの壁の記事にも書いています。合わせて読んでもらえると、大学病院で長く働くリアルが伝わるかもしれません。
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