PT×育児

「ダイ・ウィズ・ゼロ」を読んで、父を飲みに誘った――PTが育休を取った本当の理由

yutorizeropapa
この記事でわかること
  • 「ダイ・ウィズ・ゼロ」を読んで父を飲みに誘った話
  • 育休を「義務感」ではなく「自分の意思」で取ることにした理由
  • PTという仕事が育休取得の背中を押した経緯

育休を取った理由を聞かれると、いつも少し困ります。「子供の成長を見たかったから」では正確ではないし、「時代の流れ」でもない。一冊の本と、そこから始まったある行動が、私を育休に向かわせました。

育休を取る前の自分

大学病院に勤めて10年ほどが経った頃、仕事は充実していました。学会発表を続け、論文も書いていた。後輩の指導も任されるようになり、自分の存在価値を仕事の中に見出していました。

その代わり、家族と過ごす時間は少なかった。両親とも、妻とも。同僚と飲みに行くのは当たり前で、「仕事を一生懸命やること」が正しいことだと信じて疑いませんでした。

今思えば、「仕事ができる自分」でいることが、アイデンティティになっていたのだと思います。

「ダイ・ウィズ・ゼロ」との出会い

そのときに読んだのが「ダイ・ウィズ・ゼロ」でした。「死ぬときに残高ゼロにしろ」というタイトルから、お金の節約術か何かだと思っていました。読み進めるうちに、それは時間と経験の使い方の話でした。

何にお金を使うか。何に時間を使うか。なんとなくではなく、自分で意識して決める。それが本の核心でした。衝撃的だったのは「死ぬときにゼロにする」という発想そのものよりも、「ではあなたは今、何に使っているのか」という問いかけでした。

「いつまでも子供用プールで遊べると思うな」

本の中で最も刺さったのが「やりたいことの賞味期限」という章でした。その中の一節のタイトルが「いつまでも子供用プールで遊べると思うな」です。

子供が小さい時期は、二度と来ない。今の自分に当たり前のように見えているこの光景は、気づかないうちに終わっている。そのことを、この一行はダイレクトに突いてきました。

私はそれまで、「いつかやればいい」と思いながら生きていたことに気づきました。いつまでもこの状況が続くと、どこかで思い込んでいた。本当にやりたいことをやっているのか、と初めて問われた気がしました。

岩さん
岩さん

「いつまでも子供用プールで遊べると思うな」という一節を読んだとき、ページをめくる手が止まりました。仕事をしながら、ずっと「あとでいい」と思い続けていた自分に刺さりました。

タイムバケットを作った

タイムバケットを作ってみて気づいたこと
  • 「いつかやる」を具体的な年齢に当てはめると、意外と時間がない
  • 父と飲みに行くのも、子供と遊べる時期も、期限がある
  • 「今しかできないこと」に優先順位をつけるようになった

本の中に「タイムバケット」という考え方が出てきます。人生の各時期に「やりたいこと」「やっておくべきこと」を書き出し、時期ごとに整理するというものです。読んだその日に、実際に作ってみました。

書き出しながら気づいたことがあります。仕事に関わることは自然と書けるのに、家族に関わることがほとんど出てこない。それだけ、日常の中心が仕事になっていたということでした。

そして、ある項目を書いたとき、少し手が止まりました。

「父と二人でしっかり話す」

書きながら、一度もやったことがないと気づきました。

父を飲みに誘った

書いた以上、やらなければ意味がない。意を決して、父を飲みに誘いました。結構勇気がいりました。そんなことを一度もしたことがなかったので。

最初は少し警戒されました。「どうした急に」という反応です。それでも無事に行くことができました。

話した内容は家族のこと、仕事のこと、今後のこと、お金のこと。父が私たち家族のことをどれほど深く考えてくれているか、その夜に初めて知りました。私が想像していたよりも、ずっと。

ただ一つ、父が口にした後悔がありました。子供が小さい頃に、一緒に過ごした時間が少なかったこと。時代的に「男は外で働く」という価値観があったのは事実で、父を責めるつもりは全くありません。それでも父は、そのことを少し反省していました。

父はまだ元気ですが、還暦は過ぎています。病院で働いていると、父と同じ年代の方をたくさん見かけます。あと何回しっかり話せるのか——そう考えたとき、タイムバケットに書いたことを実行してよかったと思いました。

患者さんからも、同じ言葉を聞いていた

PTとして病院で働いていると、患者さんから人生の後悔を聞くことがあります。その中で繰り返し聞くのが「子供ともっと一緒に過ごせばよかった」という言葉です。

父と同じ年代の患者さんが、同じことを言う。それを何度も聞いてきたはずなのに、自分のこととして考えたことはありませんでした。

父の後悔と患者さんの言葉が重なったとき、「仕事は今しかできないのか」と改めて考えました。仕事は続けられる。でも、子供が小さいこの時期は続かない。本が突いてきた「賞味期限」という言葉が、急にリアルになりました。

育休を「自分の意思で」取ることにした

子供が生まれたら育休を取ろうと、このとき決めました。時代の流れだから、ではない。制度があるから、でもない。自分が何を大切にしたいかを考えた結果として取る、と決めました。

「ダイ・ウィズ・ゼロ」が伝えているのは、時間もお金も「なんとなく」使うなということだと思っています。何に使うかを自分で決める。育休取得も、その問いへの自分なりの答えでした。

実際に育休を取ってどうだったかは別の記事に書いています。ここではその決断に至った理由だけを残しておきたいと思いました。

まとめ

まとめ
  • 育休を取った本当の理由は「ダイ・ウィズ・ゼロ」にあった
  • 患者さんから聞いた後悔が、決断を後押しした
  • 「義務だから」ではなく「自分がそうしたいから」取った育休だった

「ダイ・ウィズ・ゼロ」を読んで変わったのは、何かを「なんとなく」続ける自分を一度立ち止まらせてもらえたことです。

タイムバケットを作り、父を飲みに誘い、育休を取った。本が直接そうさせたわけではありませんが、考えるきっかけをくれました。

PTという仕事柄、老いと後悔を間近で見る機会が多い。「後で後悔しないか」という問いを持ちながら、今どこに時間を使うかを考えること——それは、働き続ける上でずっと大事にしていきたいと思っています。

ABOUT ME
岩さん
岩さん
大学病院17年・2児パパの現役PT
大学病院で17年働く現役PT。修士・認定PT取得、育休2回取得の2児パパ。 転職はしていないけど、「このままでいいのか」とずっと考えている。転職サービスで外の市場を調べ、自分の立ち位置を把握した上で今の職場にいる。キャリア・転職・育児・お金について、答えじゃなくてリアルを書いています。
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