転職ではなく異動を選んだ理由|大学病院PT 10年目が感じたキャリアの転換点
私が入職した2009年頃は、スタッフの半数以上は20代で、セラピストの責任者は30代半ばでした。その頃に比べると今は同じ職場に10年以上いる理学療法士が増えていると感じます。転職しようか、異動しようか、それとも今の職場に残るべきか。キャリアの転換点で悩む理学療法士は多いと思います。私が大学病院に10年勤めて「異動」を選んだ経緯と、そこから見えたものをお話しします。
転職ではなく異動を選ぶまでの葛藤
経験年数を重ねると後輩が多くなり、指導する立場になった時に後輩から相談が多くなってきました。後輩からの疑問にすべて明確に答えることができるわけではなく、抽象的に返答してしまうことがありました。
後輩から脳卒中患者の離床をしたいのですが、心疾患、糖尿病もあり、リスク管理はどうすればいいですか?という質問がありました。私は、忙しかったこともあり、かなり抽象的に「無理のない範囲でやってきて」と伝えていました。後輩の釈然としない表情が今でも思い出されます。
あくまでも個別ケースであるため、後輩が納得する回答を自分が出せたかはわからないですが、忙しさを理由に慣れた環境にあぐらをかいているのではないかと気付かされました。この経験を機に、自分が今の職場のままでいいのかと考えるきっかけになりました。
急性期大学病院で10年間働いて見えたもの
総合病院であったため、整形・中枢・内部障害の疾患を満遍なく学ぶことができました。臨床面においては幅広く患者さんを診ることができるようになりました。教育面においては後輩の指導や学生の指導も積極的に行い、教育の重要性について学ぶことができました。研究面においては働きながら大学院に通い修士号を取得し、論文や学会発表も行うことができました。職場内の役割においてもリーダーを任されるなど、年々責任も増えるようになりました。総合的にみても充実しており、着実に職場内で理学療法士としてキャリアを重ねていくことができていました。
このままでいいのかと思い始めた時期
仕事は充実し、忙しい毎日を過ごしていましたが、限られた権限、環境であったことから、自身が成長していないのではと感じ始めました。感じ始めたきっかけは、冒頭でも述べたように慣れた環境に依存し、自身で考えることが減ってきていると感じたことです。
自分自身で臨床を行う上では、経験や知識をもとに実施できると思っていました。しかし、経験年数を重ねたことで他者から評価されることが減り、自身の評価やプログラム、効果判定を客観的にみることができなくなっているのではないかと感じ始めるようになりました。人には厳しく自分には甘いという構図が出来上がってしまっていたのかなと思います。この経験が今の職場のままでいいのかと考えた一番の要因になったかもしれません。
外の世界を知らない不安
自身が同じ職場でいいのかと悩みを抱えている時に、理学療法士養成校の同期と久々に集まって話をしました。その時に、自分の知らない言葉が飛び交っていました。私は少し焦りを感じました。
「私はこのまま同じ職場で働いていて大丈夫なのか?」「職場内では評価されているが、外に出ると通用しないのではないか?」そのようなことを私は思いました。一生同じ職場で働くかわからない、選択肢はあった方がいいと思いました。
「転職」ではなく「異動」を考えた理由3選
1:知らない環境に飛び込むリスク
系列の病院であれば職場の雰囲気や人間関係をある程度事前に把握できる点が、私にとっては安心材料でした。一方、新規の働き口を探す場合には、働いてみないとわからないというリスクがあると考えています。最近では、転職サイトが詳しく職場内の情報を記載していることもあり、その点は改善されていると思いますので参考にするとよりイメージがつきやすいと思います。
2:給与面
私の場合、異動であったため給与はそのまま引き継がれました。生活していく上で給与が変動すると、生活をどのようにしていくか不安になると思います。私は既婚者であったため、給与が下がることは避けたいと思いました。転職サイトを参考にすると今の職場より給与が上がる場合もあるため、確認することは非常に重要だと思います。
3:元の職場に戻る可能性があったから
私は入職した職場が嫌だったから、異動したいと思ったわけではありません。自分自身が感じる現状の閉塞感と外の職場を知るという点が「異動」という方法に合致したからです。このように自身のキャリアを考える上で「異動」を行うのは、私にとって前向きな選択でした。
「異動」前に考えたこと
本当に環境を変える必要はあるのか?
現状の職場でもまだまだ経験していないことも多くあり、学ぶことは多くありました。今回の記事で、認識として間違って伝わってしまわないようにしたいのが「異動」や「転職」は絶対にいい!というのを伝えたいわけではないです。もちろん、違う環境で取り組むことは経験を積む意味でも非常に有意義なことです。一方で、同じ職場で自分の役割を明確にして、働き続けることも非常に価値があります。どちらが良くて、どちらが悪いという考えではなく、自分自身がどうしたいかについて考えることが大事だと思っています。
「異動」すべきか悩んだ際に決断した3つのポイント
- 理学療法士として成長したいと思った
環境に慣れてしまい自身の成長を感じづらくなっていたタイミングであったため、新しい環境に移ることで、自身の成長をしたいと思いました。自分自身はまだ未熟で、まだまだ学ばなければならない状態なのに、同じ職場に長くいるだけで上司となり、人に伝える資質は本当にあるのか?井の中の蛙になってしまわないか?このように感じたことが異動を決意した大きな要因です。 - 多様な価値観を学びたかった
病院や施設ごとにやり方や考え方があるため、同じ病院や施設のみで学んだ場合、他のやり方や考え方に触れる機会は少なくなってしまうと考えました。学会などで似たような症例においても介入方法が異なっているなど、施設によって考え方ややり方は異なることは知っていました。自身も患者さんに対して多くの選択肢があった方が理学療法士として成長できると思いました。 - 挑戦したかった
気づけば30歳になっており、将来的には子育てを積極的に行うなど多くの選択肢も考えておきたいと思っていました。私が働いている感覚としても、年齢を重ねてくると、何かに挑戦することは、億劫になるのではないかと感じていました。そのため、チャンスがあるのであれば挑戦したいと思っていました。
異動して見えたこと
同じ急性期でも文化は違った
同じ急性期病院でも、働き方ややり方は大きく異なっていました。特に、理学療法介入についての考え方は、大きく異なっていました。私が感じたこととして、今までの職場は昔から言われているやり方をやっていたのに対して、異動した職場は、最新のやり方を取り入れて試行錯誤している状況でした。どちらが、いいのかについてはここで述べることはしません。人によって、こっちがいい、あっちがいいというのはあると思います。ここでお伝えしたいのは、異動したからこそ、違いというものを感じることができたという前向きな発見です。
自分の強み、弱みがはっきりした
職場が変わっても同じように働けると思っていました。案の定、全然通用しないと感じてしまいました。知識や経験の差がここまで出るのかと非常に落ち込んだことを覚えています。一方で、クヨクヨ悩んでいても仕方がない。ということもあり、臨床経験は重ねていましたが、1年目よりも多く吸収しようと、質問を多くしました。
失敗を重ね、質問をしていくうちに一つ気づいたことがあります。働き始めは、全然通用しないと思っていましたが、徐々に、今までの知識や経験が紐づけられて、どんどんできるようになっていくのを感じました。職場が変わるとやり方が異なるので、うまく力が発揮できないことはあると思います。それは、今までがダメだったわけではなく、その職場でのやり方に慣れていないだけだったからです。そのため、徐々に自分の持ち味を発揮することができるようになりました。私の強みは、へこたれず、何事も吸収しようと聞きにいくことだったかもしれません。
慣れるまでは6ヶ月
私の場合は、異動した職場に慣れるまで、約6ヶ月程度かかりました。何をもって慣れるか、と言われるとなかなか難しいとは思います。私の定義としては
- 自分1人で患者さんを診ることができる
- わからない点は相談できる
- 臨床以外の仕事もこなせる
- 仕事が終わった後にも気力が保たれている
特に4つ目がなかなか難しかったと記憶しています。どうしても、疲れます。何もしていないのに。体と頭を鳴らすという意味でも6ヶ月は適当であったのかなと思います。また、体力面から考えても若いうちに異動できたことは私にとっては良かったと感じました。
まとめ
キャリアを考えるタイミングはどなたもあると思います。実際に行動に移すことは少しハードルが高いことだと思います。今回の記事を読んでいただき、このような方法もあるのかと感じていただければ幸いです。
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